ダメ社会人のダメじゃないかもしれない毎日

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ダメ学生名作を読む『姑獲鳥の夏』 作 京極夏彦

こんばんは、こんばんは。最近いきなり冷え込みましたね。おまけにスッキリ晴れることもめっきり少なくなり洗濯物がしっかり乾かずに困っています。乾燥機付きの洗濯機が欲しいです。

 

今回の記事ですが「おい、書くことねぇぞどうしよう」と困った僕がカップラーメンを食べ、麦茶を飲んだ瞬間に脳内に舞い降りた企画となります。まさに天啓でした。「そうだ、ダメ学生の僕でも読めて、面白いと感じる本であればその本は万人に受けるはず。皆様におすすめしなければ」と半ば自虐的で使命感にすら似たような思いつきでしたがずっっとブログを更新しないわけにもいかないのでこの企画はレッツゴーということにあいなりました。

 

さて今回僕がおすすめするのは『姑獲鳥の夏』という京極夏彦先生の書かれたミステリー小説となります。

 

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

 

 

 

これをミステリー小説とたった一言で言うことができるのかどうなのかと僕は読了後からずっと悩んでいるのですがここではミステリー小説と説明させてください。

 

舞台は戦後間もない日本、古書店を営む通称"京極堂"と精神に不安定さを抱える売れない小説家関口、頑健で真面目、現場主義な刑事木場、人には見えないものが見える変人探偵榎木津。これらの人物が20ヶ月も妊娠したままであるとの妊婦とそれを取り巻く怪しげな病院を舞台に謎と相対する物語となっています。

 

僕がこの作品に興味を持ったきっかけは大学で民俗学の講義を受講したことでした。もともと、そういったオカルトチックー読んでくださればわかりますが京極堂はこの表現を嫌いますーな事に興味があり、各地の伝承や民話を本で探したりネットで見る事が好きな少年であった僕からするとその講義を受ける事ものめり込むのも必然でした。民俗学の魅力に取り込まれた僕が柳田國男先生の本を経て本屋さんで運命的な出会いをしたのがこの本でした。作中では謎を解くために各地に伝わる民話や、お寺のルーツ、民族信仰を巧みに組み合わせ真実へと近づいていきます。そう、この作品をミステリー小説と紹介することにわずかな迷いを覚えた理由は、この作品は犯罪を解決するという形は取っているものの、それよりも民俗学的、宗教学的な側面からアプローチしていくことが多いため一般的なミステリー小説に見られる推理をするかというと「うーん、してはいるけど」みたいな答えしか僕はできなくなるからです。

 

ただ、このシリーズにおける京極堂の名台詞「この世に不思議なことなんて何もないのだよ」に表現されるように、京極堂が行う自身の持つあらゆる知識を使った、時には友人関口たちからすらペテンだ詭弁だと揶揄されるような、それでいて筋の通ったストンと腑に落ちる推理を読むと「ああ、不思議なんてないんだ」と納得させられてしまいます。この台詞回しは一読の価値ありです。

 

また、この作品はもう15年以上前の作品であるにもかかわらず仮想現実や万能細胞を示唆するかのような表現があり作者の非常に深い知識を伺えます。そしてそれら未来の科学技術の根本には太古から存在する非科学的な問答をする必要性が強く残っている事までも読み取れます。例えば万能細胞を使って人間を作った時、果たしてそれは目覚めるのか、魂が宿っていないのに。というような。

 

この物語の結末はきっと誰もが考えなかった、ある意味ミステリー小説としては反則かもしれません。でも最後まで京極堂の推理を、関口の苦悩を、木場の実直な捜査報告を、榎木津の突拍子もなくそれでいて真理をついた語りを読み通したあなたにはきっと「何も不思議はない」結末となっているでしょう。京極堂に「謎」という憑き物を落としてもらい、京極堂の「魅力」に取り憑かれましょう。

 

ぜひご一読を。

 

ちなみに僕はもうすぐシリーズ3作目の『狂骨の夢』を読み終えそうです。